超音波医学
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48 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集「Echocardiographic management of valvular heart disease」
  • 鍵山 暢之, Sirish SHRESTHA
    2021 年 48 巻 4 号 p. 151-163
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/12
    [早期公開] 公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    僧帽弁逆流(MR)は,先進国で最多の弁膜症の1つであり,心エコー図評価は,病変,重症度および治療適応を評価するのに不可欠な手段である.僧帽弁複合体の構造は複雑で,僧帽弁弁尖と僧帽弁輪のみでなく腱索,乳頭筋,左室壁も含まれ,MRは僧帽弁弁尖または腱索の器質性変化による一次性MRと,弁尖自体には異常のない二次性MRに分けられる.さらに二次性MRは乳頭筋および左室壁の偏位や機能不全などの左室に原因がある場合と,著明な僧帽弁輪拡大を中心とする左房に原因がある場合に大別される.一次性MRと対照的に,左室機能不全による二次性MRでは軽度の逆流も予後に関与するため注意が必要である.重症度評価は,外科的介入および経カテーテル的治療の適応判断に重要であり,心エコー図法によるMRの重症度評価は多数のパラメータを用いて行われる.しかし,どの手法も単独で十分な信頼性を有してはおらず,常に複数の手法を組み合わせることが推奨される.心エコー図にてMRの重症度の結論が出ない場合,磁気共鳴画像法(MRI)が有用な場合がある.重症度に加えて,僧帽弁逸脱による一次性MRでの病変局在や,左室の拡張/機能不全による二次性MRでの左室の大きさといった解剖学的情報は,治療方針決定に寄与する重要事項であり,経食道心エコー図法および3D心エコー図法は,これらの情報を得るのにも重要な手法である.また,近年隆盛の経カテーテル的治療でも,心エコー図法は手術やエンドポイントの指標として極めて重要な役割を果たす.本総説では MRの心エコー図評価の現行基準を包括的に要約する.

  • 北井 豪, Rayji S. Tsutsui
    2021 年 48 巻 4 号 p. 165-175
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/12
    [早期公開] 公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    大動脈弁狭窄症(AS)は,有病率の増加,不良な予後,ならびに複雑な病態生理学のために大きな医療問題となっている.心エコーは,ASの包括的な形態学的および血行動態的評価で中心的な役割を果たす.ASの重症度診断は,最大大動脈弁通過血流速度,大動脈弁通過血流平均圧較差(mPG),および大動脈弁口面積(AVA)の3つの血行動態指標に基づいている.しかし,AVAが<1.0 cm2であるが,mPGが<40 mmHgの場合など,各指標間で重症度評価が一致しないことも多い.このような病態は低圧較差AS(LGAS)として知られている.特に,一回拍出量や駆出率が低い症候性LGAS患者は,重症度の診断がさらに難しく,予後も不良であるため注意が必要である.このLGASの重症度評価には,負荷心エコーが重要な役割を果たす.外科的大動脈弁置換術(SAVR)の禁忌となる併存疾患を有する高齢患者やハイリスク患者には,経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)が可能となり,ASの治療は大きく変化してきている.TAVRではコンピュータ断層撮影(CT)と共に,心エコーは大動脈弁と周辺の大動脈基部複合体の術前評価に非常に重要である.本総説では,ASの診断と管理に心エコーが果たしてきた役割の進展,大動脈複合体の評価の困難さ,負荷心エコーや3D心エコーといった専門的方法のニーズ拡大について概説する.

  • 楠瀬 賢也
    2021 年 48 巻 4 号 p. 177-185
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/12
    [早期公開] 公開日: 2021/05/14
    ジャーナル 認証あり

    負荷心エコー図検査は,虚血性心疾患,心臓弁膜症(VHD),心不全,先天性心疾患,肺高血圧など複数の心血管疾患の評価に広く使用されている.無症候性の重症または症候性の非重症心臓弁膜症において,負荷心エコー図検査は患者管理の中心的な役割を果たす.2017年現在,アメリカ心臓病学会,アメリカ心臓協会,欧州心臓病学会および欧州心臓協会の心臓手術VHDガイドラインでは,(1)症状と弁膜病変との関連を確認する,および(2)運動に対する血行動態反応を評価する目的で負荷試験を推奨している.例えば大動脈弁狭窄症の重症度を評価する際,低流量患者の場合では,負荷心エコー図検査を用いることで負荷に対する流量依存性変化をとらえ,重症であるかを判断することができる.VHDにおける負荷心エコー図検査の臨床的適応は,本手法の予後予測能が明らかになるにつれて拡大し,治療介入の初期マーカーとなりえる.一方,実臨床で利用していくために,VHDの負荷心エコー図検査の標準化は必要であろう.心エコー図検査を行う施設は,負荷心エコー図検査のVHDへの最適な応用法と精度を向上させていくために,まずはその臨床的有用性を認識する必要がある.本論説では,負荷心エコー図検査は安全であり,症状のない患者の複雑なメカニズムを理解するために有用であることを概説し,VHD患者を適切に管理するための,ドブタミン,自転車エルゴメーター,トレッドミル,下肢陽圧を含む負荷心エコー図検査の臨床的応用について具体例を含め提示する.特にVHDにおける負荷心エコー図検査の使用に関し,現在コンセンサスが得られているポイントに注目したい.

原著
  • 柿沼 藍, 荒川 まい, 鯉渕 晴美, 中里 恵梨香, 木村 由美子, 大澤 正明, 山本 さやか, 紺野 啓, 山田 俊幸, 谷口 信行
    2021 年 48 巻 4 号 p. 187-192
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/12
    [早期公開] 公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    目的:超音波検査室は適切な感染対策が必要とされる場であるにもかかわらず,ゲルボトルやウォーマーの運用については明確な定めがなく,現状では感染対策上不十分と考えられる.諸外国では過去に超音波ゲルを介した院内感染事例が報告されており,わが国での発生も懸念される.そのため,我々は現状のゲルや周囲環境の汚染状況の調査,洗浄後の経過観察を行い,院内感染対策を目的としたゲルボトルやウォーマーの取扱い方法の確立を目指した.対象と方法:洗浄前,洗浄後,ゲル使い切り後,洗浄3週間後のゲルボトルやウォーマー,ボトルの乾燥かごより検体を採取し,培養・同定検査および菌量の測定を行った.結果と考察:洗浄前にはボトル口や複数のウォーマーから皮膚常在菌や枯草菌が検出され,検査手技の影響や環境からの汚染が考えられた.十分な洗浄・乾燥後では,いずれの部位からも菌は検出されなかった.ゲル使いきり後および洗浄から3週間後では,ウォーマーから枯草菌が検出された.結語:検査環境の常在菌や環境菌による汚染は,十分な洗浄・消毒により除去されることが明らかとなった.また適切な洗浄により,ボトルの再利用は可能であると考えられた.

  • 飯島 尋子, 多田 俊史, 蜂屋 弘之, 西村 貴士, 西村 純子, 吉田 昌弘, 會沢 信弘, 平田 慎之介, 熊田 卓
    2021 年 48 巻 4 号 p. 193-199
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/12
    [早期公開] 公開日: 2021/06/14
    ジャーナル 認証あり

    目的:超音波エラストグラフィによる肝硬度は,肝線維化だけでなく肝の炎症,黄疸やうっ血などの影響を受けるとされる.肝の線維化および壊死・炎症が肝硬度に与える影響に関して検討した.対象と方法:7,825例の慢性肝疾患のうち測定基準に合致した809名を対象に,TEおよびVTQから得られた値を用い組織学的に診断された線維化および壊死炎症のグレードと比較検討した.結果と考察:TEおよびVTQの線維化診断能AUROCは,F2≤,F3≤,F4はそれぞれ,TEが0.809,0.860,0.947,VTQが0.793,0.836,0.941であった.肝線維化の進行とともに肝硬度は有意に上昇した.また肝の壊死・炎症の進行でも肝硬度は有意に上昇した.線維化グレードごとの検討でも肝硬変例を除いて炎症が高値なほど肝硬度は高値であった.結論:肝硬度は肝線維化の非侵襲的な診断法として有用であるが,肝の炎症にも影響を受け,値の解釈には注意が必要である.

症例報告
  • 美馬 康幸, 長谷川 潤一, 古谷 菜摘, 佐々木 貴充, 倉崎 昭子, 土居 正知, 高木 正之, 小池 淳樹, 鈴木 直
    2021 年 48 巻 4 号 p. 201-204
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/12
    [早期公開] 公開日: 2021/04/23
    ジャーナル 認証あり

    胎盤血管腫は組織学的にのみ確認されて,臨床的には問題のないものが少なくない一方,胎児発育不全や胎児貧血などの原因になることがある.自験例の報告と超音波検査による胎盤精査時のカラードプラの必要性について論じる.症例は妊娠31週に胎児発育不全のため当院紹介受診となった.母体既往,胎児,胎児付属物に明らかな異常はなかった.染色体検査は施行されていなかったが,明らかな原因を同定できない胎児発育不全と診断した.その後のBモード超音波検査で胎盤の一部が他の胎盤実質と比較して低輝度であることに気づき,カラードプラを施行したところ豊富な血流の増加を認め,胎盤血管腫と診断した.管理分娩の方針とし妊娠37週分娩誘発して児娩出に至った.児は2,162g,Apgar Score 1分値9点,5分値10点.児には貧血やdisseminated intravascular coagulation,心不全などの合併症は認められなかった.娩出胎盤には4×6cm大のやや赤色の腫瘤を認めた.病理組織学的検討において腫瘤は血管腫であり血管腫周囲には小梗塞像も認められた.本症例の血管腫は小さくはなかったが,Bモードでは正常胎盤実質と区別がつきにくい画像所見であった.妊娠中の胎盤の評価やスクリーニングには,Bモードだけではなく,ルーチンでカラードプラも併用する必要があると考えられた.

今月の超音波像
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